二都物語・上
二都物語
A Tale of Two Cities

【著者】 チャールズ・ディケンズ
【訳者】 中野好夫
【出版】 新潮社 1991年
【価格】 514円
【形態】 338P 16cm
【ISBN】 4-10-203003-4
【あらすじ】
 フランス貴族の子でありながらその暴政を嫌い、家名を捨てて渡英したチャールズ・
 ダーニー、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートンの二人は、罪なくし
 てバスティーユに18年の幽閉生活を送ったマネット老人の娘ルーシーに思いを寄せる。
 折りしもフランスでは、大革命の日が間近に迫っていた。
 

【一言】
 ディケンズの小説は読みやすいと思うのですが、この本は読みやすいというだけでは
 なく、フランス革命へと向かっていく怒涛のようなエネルギーに引き込まれてしまい
 ます。物語の最初から、民衆の不満はどんどん膨らんでいって物語はフランス革命へ
 と向かっていく様子は、大河の流れに呑まれたようです。そしてフランス革命が起こっ
 てからの狂気は、あり地獄のようで、とにかく一刻も早く逃れたいとばかり思います。
 (前の)イラクとか北朝鮮とか、人権侵害が国によって行われているような国では、他
 の国がとやかく言わなくても、民衆の力はすごいわけだから、遅かれ早かれその国は
 民衆によって改革されるのだろうと、この本を読むと思います。
 ただ、この頃のフランスと現在の国との違いは、思想統制じゃないかと思います。
 人々が自由にものを考え、「二都物語」を読んだなら、人民革命が起こらないはずが
 ない。それが起こらないのは、思想統制によって、自由な考えを奪われているからな
 のだと思いました。
 実際、フランス革命はだんだん残虐行為になっていって、正義もなかったとこの中で
 は描かれています。実際人民革命が起こって、人々が暴徒になる可能性は大きいと思
 うので一番平和的な解決策とはいえないかもしれません。
 初めて読んだ時、結末のシドニー・カートンの選択はとても驚きました。最初は一種
 自殺なのかと思ったりもしました。けれど、何度か読むうちに、彼のルーシーに対す
 る思いや、彼の中にある美徳が見えるようになってきて、その決断に深い感銘を受け
 ました。単なる犠牲ではないし、単なる愛情の表現ではない、何か奥深くて崇高なも
 のを感じました。







レ・ミゼラブル1巻
レ・ミゼラブル
Les Miserables

【著者】 ヴィクトル・ユゴー
【訳者】 佐藤朔
【出版】 新潮社
【価格】 629円
【形態】 475P 16cm
【ISBN】 4-10-211701-6
【あらすじ】
 わずか一片のパンを盗んだために、19年間の監獄生活を送ることになった男、ジャン
 ・ヴァルジャンの物語。
 出獄したジャンは、マドレーヌと名乗って巨富と名声を得、市長にまでなる。
 しかし、自ら自分の過去を明らかにしたために、市長から一転してふたたび監獄生活
 に戻ったジャンは、軍艦で労役中にマストから海に飛び込んで巧みに脱出する。自由
 を得た彼は、死に瀕した売春婦ファンティーヌとの約束に従って、幼くして捨てられ
 たその娘コゼットを悪辣な養父母のもとから救い出し、彼女を伴ってパリの暗闇の中
 へと潜入する。
 

【一言】
 文豪ユゴーの名作。長いですが、読む価値ありです。
 何度も映画化やテレビドラマ化されているので、ストーリーを知っている方も多いと
 思いますが、本で読むとヴァルジャンの苦悩やジャベールとの息詰まるやり取りなど
 が手に取るように伝わってきます。
 たかが1個のパンを盗んだだけで刑務所に入れられてしまう社会。1度罪を犯しただ
 けで、前科者として執拗に追われる社会。
 亡命生活の中で書かれたというこの作品は、いたるところで反体制の要素がこめられ
 ています。ヴァルジャンの不当ともいえる罰は、ユゴーに下された判決を表している
 のだと思います。
 そういう目で見ると、ヴァルジャンを追いかけまわすジャベールは反感の目でしか見
 られないのですが、ジャベールその人に注目してみると、彼はまさに正義の人なので
 す。
 人間は、ある一つの面でしか判断できないものなのではなく、色々な要素を持ってい
 る事を感じます。ヴァルジャンは罪を犯したけれど償い、社会に貢献しました。人は
 善なる部分を持っているし、更正することもできる。
 正義の人ジャベールにとっては、人は善か悪しかなかったのだろうと思います。彼が
 ヴァルジャンを追いかける理由は、脱獄したからですが、その理由は考えてもみない
 し、ヴァルジャン=悪としか考えていない。しかし、後半彼らが巻き込まれていく共
 和主義者による市民運動の激戦のなかで、ジャベールはようやくヴァルジャンその人
 を知ります。その時の彼の衝撃はどのようなものであったか、計り知れません。
 ヴァルジャンの人生は逃亡と迫害の人生でしたが、その中で色々な人に出会い、人の
 ために動いていきます。その姿は学ぶものが多いと思いました。
 社会のあり方、人間のあり方を考えさせられた作品です。








アンナ・カレーニナ・上
アンナ・カレーニナ


【著者】 レフ・トルストイ
【訳者】 木村浩
【出版】 新潮社 1972年
【価格】 560円
【形態】 439P 15cm
【ISBN】 4-10-206001-4
【あらすじ】
 モスクワ駅へ母を迎えに行った青年士官ヴロンスキーは、母と同じ車室に乗り合わせ
 ていたアンナ・カレーニナの美貌に心を奪われる。アンナもまた、俗物官僚の典型で
 ある夫カレーニンとの愛のない日々の倦怠から、ヴロンスキーの若々しい情熱に強く
 惹かれ、二人は激しい恋に落ちてゆく。
 一方ヴロンスキーがアンナを愛していることを知ったキチイは失意に陥るが、以前よ
 り変わらぬ愛を注ぐ理想主義的地主貴族リョーヴィンの妻となり、祝福された生活を
 送る。
 

【一言】
 19世紀のロシアの貴族社会について知りたいと思ったら、この本を読むのが手っ取り
 早いのではないかと思います。アンナのカレーニン家、アンナの兄のオブロンスキー
 家、キチイのシチェルバツキー家、リョーヴィン家。それぞれの貴族の家ごとに生活
 や財政が異なり、様々な貴族の生活を見ることができます。
 あらすじからも分かるように、アンナの恋と転落の人生を描いています。その背景に
 は、当時のロシアの貴族の生活があります。結婚なども、親が決めるというわけでも
 なく、当人同士で決められるようになってきた時代ではありますが、早く結婚しなけ
 ればならないため策略によって結婚へと推し進めたりということもある時代です。
 必ずしも全ての人が愛のある結婚をしているわけではないので、愛人もありですが、
 アンナは本当に愛すべき人に出会ってしまった。それによる悲劇なのだと思います。
 この作品のすごい所は、それだけの話ではない所です。
 ヴロンスキーは結婚の意志もないのにキチイに近づき、ヴロンスキーに惹かれていた
 キチイは好意を持っていたリョーヴィンのプロポーズを断ってしまいます。結局はキ
 チイはリョーヴィンと結婚するわけですが、この2組のカップルは正反対の人生を送
 ることになります。そして、悲劇へと向かうアンナに対して、リョーヴィンは人生の
 真理を悟る。
 当時ほとんどの人がロシア正教を信仰していたのに、リョーヴィンは宗教を捨て自ら
 模索していきます。途中非難されるようなことがあっても、彼は自分の道を進み、自
 分で掴むしかないことが分かっています。色々な出来事を通して、宗教とは何か、神
 存在、生と死などについて、自分なりの答えをつかみます。
 様々な苦悩の中で真理を掴み取る姿は、暗闇の中で一筋の光を掴み、一気に明るくなっ
 いくようで、読んでいる自分もなにかを掴んだような気分になりました。
 このリョーヴィンの姿はまさしくトルストイ自身で、リョーヴィンこそがこの作品の
 主人公であると思います。








風と共に去りぬ1巻
風と共に去りぬ
Gone with the Wind

【著者】 マーガレット・ミッチェル
【訳者】 大久保康雄 竹内道之助
【出版】 新潮社 1977
【価格】 600円
【形態】 365p 15cm
【ISBN】 4-10-209101-7
【あらすじ】
 アメリカ南部の大農園に生まれたスカーレット・オハラは16歳。輝くばかりの美貌と
 火のように激しい気性の持ち主である。恋人アシュレーがメラニーと結婚すると聞い
 て、彼女は面当てにメラニーの兄チャールズの妻となるが、折りしも南北戦争が勃発、
 波乱の人生が幕を開ける。
 開戦2ヶ月で未亡人となり、アトランタでの銃後生活に明け暮れるスカーレットへ、
 封鎖破りで巨利を占める風雲児レット・バトラーが次第に接近を始めた。南軍は苦戦
 をしいられ、アトランタ陥落は目前に迫った。メラニーの出産で身動きならぬ彼女の
 の元へ、バトラーが馬車で駆けつけ、あやうく戦火を逃れるが、身も細る思いでたど
 りついたタラは、全てが一変していた。
 

【一言】
 読み始めて思ったのは、スカーレットはなんて高慢な女だろう!ということでした。
 めちゃくちゃむかつく女ですが、根はとても優しい人で、とても強い。読み終わって
 彼女に強く憧れました。彼女に多くのことを学んだと思います。
 私が元来持っていた性質に共鳴した部分が合ったのでしょう、その後何が起こっても
 切り抜けていけるし、乗り越えていこうという考え方を持つことができるようになり
 ました。
 南北戦争時代で、女性の自由は大きく制限されて家に押し込められている時代、自分
 らしく生きることができず、時代に虐げられていた人が多かったであろう時代に、誰
 がなんと言おうと自分の道を行くスカーレットはすごい。
 けれどその性格が災いして幸せを逃してしまう所がちょっと悲しい。それでも彼女は
 へこたれることがない。
 へこんだ時に読むと、些細なことで何くじけてるんだと思えるでしょう。でも立ち直
 るために読むには時間がかかりますが・・・。
 アシュレーがメラニーと結婚するとき、何だこの男と思ったのですが、アシュレーの
 選択は正しかったのです。スカーレットは彼に扱える女ではない。戻ってきたアシュ
 レーが弱く見えてしかたなかったです。
 カクテルにスカーレット・オハラとレット・バトラーがありますが、スカーレットは
 何度か飲んだことがあります。キツイかと思ったらクランベリーで甘め。
 レット・バトラーは今度飲んでみたいです。








イリアス上巻
イリアス
Ilias

【著者】 ホメロス
【訳者】 松平千秋
【出版】 岩波書店
【価格】 上:840円 下:903円
【形態】 454p(上) 15cm
【ISBN】 4-00-321021-2
【あらすじ】
 トロイア戦争の末期、戦争は既に10年目に入っていた。アガメムノン率いるギリシャ
 勢の陣中では、トロイ攻略をあきらめて撤退すべきか王たちは悩んでいが。
 そんな中、クリュセのアポロン神殿の祭司クリュセウスは、戦利品としてアガメムノ
 ン王に奪われた娘クリュセイスを取り戻そうと、莫大な身の代を持ってやってくる。
 クリュセイスを手放したくないアガメムノンはクリュセウスを侮辱して追い返した。
 帰途でクリュセウスはアポロンに祈願すると、アポロンは疫病をはやらせてギリシャ
 勢を苦しめた。
 疫病の発生から十日目、アキレウスの発案により集会が持たれ、クリュセイスを戻す
 べきとの意見で王たちが一致する。アガメムノンはしぶしぶ同意したが、その代わり
 に、アキレウスが戦利品として得たブリセイスを取り上げてしまった。
 腹を立てたアキレウスは、アガメムノンのために戦争に出ることを拒否し、母テティ
 スに、ゼウスにギリシャ勢を追い詰めさせ、アガメムノンに自分を軽んじたことを後
 悔させてほしいと頼み込む。
 テティスに懇願されたゼウスは、アガメムノンを夢で惑わし、すぐにでもトロイを陥
 落できると思い込ませる。ギリシャ勢は総攻撃の準備を始め、そして激戦の幕が切っ
 て落された。
 

【一言】
 世界最古の文学といわれる「イリアス」です。前々から読んでみたいと思っていたの
 ですが、映画「トロイ」をキッカケにようやく読むことができました。
 美女ヘレネやトロイの木馬で有名なトロイ戦争ですが、ここでは、戦争が始まって既
 に9年が経過しています。アキレス腱の語源ともなったアキレウスが主人公で、その
 怒りをテーマに、49日間の戦いについて語られています。
 トロイ戦争については、いくつかの叙事詩によって始まりから終りまで語られていま
 す。その叙事詩群は「叙事詩の環」と呼ばれていますが、そのうち現存しているのは
 この「イリアス」と「オデュッセイア」しかありません。
 そもそもの始まりは、アキレスとヘレネが生まれた時に定められていたといわれてい
 ます。ヘレネの父親はゼウスで、アキレウスの母親で女神のテティスの結婚について
 はゼウスが関わっています。
 そして戦争に至るまでの様々な出来事全てにオリュンポスの神々が関わり、戦争にお
 ては神々がギリシャ方、トロイ方に分かれて戦争に干渉します。
 ギリシャ勢もトロイ勢も、連合軍であるために、たくさんの王や戦士が登場します。
 あまりに多くて誰が誰だかわからなくなってしまいます。
 それに神々が関わるので、ほっときなよ!言いたくなってしまいます。
 物語は戦争の中の一部だけを描いているので、その前後の話、ヘレネの誘拐とか、ト
 ロイの木馬などの話は出てきません。全体像を知るためには、「叙事詩の環」につい
 て調べる必要があります。おかげで色々な文献をあたり、いきさつや神々の関わりに
 ついて色々分かってきました。
 映画の原作かと思って読むと、ちょっと消化不良な部分もありますが、歴史と神話の
 世界両方を楽しめる作品でもあります。
 ひたすら戦いの日々の中で、当時の戦士の生き方、名誉とは何か、宗教、生活、女性
 の地位などが見えてきます。
 実際の出来事がどうだったかということよりも、歴史と神話がミックスされた物語に
 ロマンを感じます。


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